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2012年08月30日

TOKYO LIFE

TOKYO LIFE

東京に出て、一人で暮らしたい。
と、誰もが思ったはずだ。
やりがいや生きがいを持てる仕事を持ち、アフターファイブは六本木で軽く遊び、恋人は商社のOLで、半同棲くらいのレベルで付き合う。
決して深くは突きあわない。
ほどほどに・・・・・だ。
車はシーマを購入し、夏にはヨットもチャーターしたい。
夢にまで見た東京ライフ。
すべてが揃っていて、欲求を満たすべく、様々なカルチャーが乱立している。
『・・・あの、馬鹿息子…』などと、陰口もたたかれない。
近所のたわごとなんて、カエルの面にションベンだ。
やりたいように生きれる町。
個性が散乱する町。
それが、東京だ。





「・・・こんな、田舎町とおさらば。口うるさい親から離れて、独立した人間として、東京で生きてゆく・・・」
こんな、志を胸に秘め、JRに飛び乗った少年少女はたくさんいるだろう。
バイトで貯めた金を握り締め、ボストンバックにTシャツ3枚と歯磨きセットくらい詰め、ウオークマンで『キンクス』くらい聞いて、アンニュイな雰囲気で出発する。
希望が不安を超越する。
若さと健康が最大の武器だ。
しかし東京の摩天楼は、彼らを歓迎するそぶりを漂わせながら、裏では唾を吐く・・・。
『・・・ちぇ、またいつもの田舎もんかよ…』と。
『・・・。もう、あきあきしてんだよな~、お前らみたいな奴らはよ・・・』と。







まずは、収入源を見つける。
これは、職種を選ばなければ、なんとかなる。
大田区にある、印刷工場の雑用的仕事にありつく。
『・・・使ってやってもいいが、仕事はきついし金も安い…』と、言われる。
それでもいい、と、返事をして、労働組合の会員証をもらう。
灰色の会員証だ。
手取り17万プラス、残業手当が少々、昼飯は弁当がつく。
テレビで見たトレンディードラマとは、ほど遠いが、「まあ、しかたがない・・」と、彼は思う。






マンションは近くで見つけよう。
そう思い、不動産屋をあたる。
贅沢は言わないが、8畳くらいの1ルームで、バスルームとトイレが別々で、景色が見通せて、できればセキュリティーもしっかりした部屋が良い・・・、と彼は言う。
『・・・ぴったりの条件の部屋はいくつかありますよ。駅まで歩いて5分で・・・月20万。ちょっと離れると・・・月18万から16万ってところですかね?・・・」
と、不動産屋さんは、機械的に紹介する。
彼は、息を飲み、びっくりし、あわてる。
「・・・月、5万までしか出せません・・・」
『・・・5万?それじゃ・・・・あそこしかないな~…』
不動産屋さんが連れて行った場所は、どぶ川が流れるほとりの、築50年のボロアパートだった。
嫌な臭い、風呂なし、管理されない生ごみ、汲み取り式共同便所、不衛生な共同の台所、ゴキブリ・・・・・。
TOKYO LIFE
『・・・ここなら、光熱費込みで5万です。』
「ほかには、ありませんか?」
『・・・お客さん・・・この町で、5万円だったら・・・、ここしかありません。これでも、安くしてあるんですよ。この部屋』
「わかりました、ここに決めます」
『・・・そうですか、それは良かった・・・・ちなみにですけど・・・この部屋、以前に首つりがあったんですけど・・・気になさらずに』
「・・・・・・・・・・・・」
『・・・東京はいい街ですよ・・・すばらしい、東京ライフを…』
不動産屋はそう言って、鍵を渡した。








その後、彼は、労働組合の会員証と、アパートの鍵をジーンズのポケットにしまい、仕事へ出かける日々。
仕事はきつく、汗と塗料にまみれ、夜遅く帰ると、銭湯が閉まっている。
水道に頭を突っ込み、洗っていると、『おい!うるさい!何時だと思っているんだ!殺すぞ、てめえ・・・』と、アパート住民に怒鳴られる。
生ぬるい缶ビールを飲み、スルメをかじる。
これが、夕食だ。
カビだらけの布団にぶっ倒れ、彼はおやすみの代わりにこうつぶやく・・・。
『TOKYO LIFE』







TOKYO LIFE



BYナリハラ


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Posted by PSPスタッフ at 11:46│Comments(0)
 
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