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2008年11月09日
NO GET BACK ~NEXT DAY~

朝日・・・・。
あずみの体温を胸元に感じ、そして背中には山の冷気を感じながら、俺は目が覚める。
彼女の髪の香りが、微かに漂う。
携帯で時間確認・・・7:30.
焚き火は消え、青い煙が少しだけ上がっている。
気分は悪くない。
遭難はしたものの、俺は女の子を抱きしめている。
『もう少しだけ、このままでいよう』と思う。
俺はあずみを抱きしめたまま、木々からこぼれる太陽の光を感じていた。
8:00。
あずみは目覚める。
しかたがないんで、俺も、たった今起きたふりをする。
「・・・おはよう・・・・、眠れた?・・・」
彼女は、目を擦りながら、首をたてに振る。
休み時間は終わりのようだ。
気持ちを切り替えなくてはいけない。
俺は小学校の先生の言葉を思い出していた。
「はい!、休み時間は終わりました、これから授業時間です、気持ちを切り替えましょう!わかったかな?」
「はい!」
はい・・・・その通りだよ・・・・・先生・・・・・。
俺は自分なりの考えをまとめ、あずみに問いかける。
この状況下で、俺とあずみは、チームでなきゃいけない。
お互いの同意のもと、行動をしなければならない。
しかし、責任は・・・、もし責任があるとしたら・・・・、それは俺にある。
なぜなら、年上であり、男であるから・・・・。
「あずみちゃん、俺、思うんだけど、昨日あれだけこの付近の道を探したけど、結局この場所に戻ってきただろ?食料のことも考えると、進む方向を一つに絞ったほうがいいと思う。まあ、賭けみたいなものかもしれないけど、今から歩けば、20キロは歩けるかもしれない、それに、あずみちゃんの家族が捜索願を出して、ヘリコプターもくるかもしれない、希望はある、この意見について、どう思う?」
あずみはペンを走らせる。
『それがいいと思うよ、でも、家族はいないから、ヘリコプターは来ないよ』
それを読んで俺は言う。
「ヘリコプターは来ない・・・・したがって、救助された後の記者会見もない・・・」
あずみは、笑った。
彼女の笑顔に、救われる俺がいる。
「じゃ、あずみちゃんは、どっちの方向がいいと思う?」
あずみは、太陽のほうを指差した。
「東ね、OK,じゃ、宝探しに出かけよう・・・・」
俺達は、おにぎりとサンドウィッチを半分だけ食べ、お茶とミネラルウォーターを一杯だけ飲んだ。
俺はタバコを探したが、昨日で切らしていたことに気がつき、地面に落ちている『シケモク』を吸った。
東には草原が広がっていた。
それは決して、平坦な地形ではなく、凸凹を繰り返し、林を交えながらの草原地帯だ。
12:00休憩。
最後のおにぎりとサンドウィッチを食べ、残り少なくなった、お茶とミネラルウォーターを飲んだ。
肩で息をしながら、不安そうな目をするあずみに、「大丈夫だよ・・・」と声をかける。
しかし、その言葉とは裏はらに、『今日も戻れなかったら・・・』とゆう想いがよぎる。
『今日戻れなかったら、明日が限界かもしれない・・・』
俺はその想いを払拭すべく、『口笛』を歌う。
「♪頼りなく、二つ並んだ、ふぞろいの影が、足早に・・・・」と。
あずみは、ニコッとして、拍手もくれた。
俺は、あずみの頭を撫でた。
しばらく行くと急な斜面。
それを避け、回り道して、谷へ。
小川ずたいに、まっすぐまっすぐ・・・・。
大きくカーブをし、小高い丘を登る。
登りきったところで「はあー、はあー、あずみちゃん少し休もう」と言い、寝っころがる。
あずみが俺をつっつく。
「えっ・・・、何?」
あずみが指をさす。
50メートル先には、小屋があった。
・・・・・建物があった・・・・・・。
木造のその建物は、『山小屋』と呼べるレベルではなく、かろうじて木柱に荒削りな板材が打ち付けてあり、屋根は大きな葉がいくつも茂った枝が折り重なっているだけ、床はなく草が生えている。
蜘蛛の巣だらけの建物内は、机?らしきもの、収納棚?らしきもの、ドラム缶式のフロ?らしきもの・・・が散乱していて、ここ2~3年の間に、人間が生活した形跡はない。
しかし、もっと前には、必ず誰かがここに居た。
誰かが・・・・・。
俺はあずみに言った。
「ひょっとしたら、どこかの村の近くかもしれないよ。今日はもう4時だから、ここに泊まろう。昨日みたいに小枝と乾燥した葉を拾ってきてくれる?俺は、まわりを見てくるから」
あずみは、うんうんとうなずいた。
小屋のすぐ隣には、湧き水があった・・・・水の確保!
俺は一人20分ほど歩いてみたけど、同じような風景が続くだけだった。
火は点いた。
簡単にってわけでもないけど、昨日の要領で点ける事ができた。
ささやかな炎は、暗くなりかけた小屋の中で、部屋と俺とあずみを照らした。
俺とあずみは、小屋の中を物色した。
水を含んでぐっしょりした、いくつもの布?(布団だろうか?)をはぐっていくと、泥とほこりにまぎれた『シーチキン缶詰』『ももの缶詰』『シャケの缶詰』が6缶、ナタ?片方の運動靴、トレーナーらしき?衣類(胸部分にGETと書かれている)、ナショナルのカセットテープレコーダー(中にカセットテープも入っている)、あとは・・・・、黒く汚れた、数々の物体・・・・なんだろうか?
缶詰はあっても、缶切りが見当たらない・・・。
しかたなく、その夜は、ポテトチップスとストロベリーチョコを仲良く分け合った。
もちろん、腹は減ったけど、その分水をたくさん飲んだ。
あずみは、俺をつっつく。
「どうした?」
あずみは、汚れた大学ノートを差し出し、机を指差した。
汚れを慎重に払うと、文字が見える。
たぶんではあるけどこう書いてある。
『1970年 義男と孝子の 死までの日記』
俺とあずみは、目と目をあわせ、唾を飲み込んだ。
あずみは、震えだしたので、俺は迷わず抱きしめた。
「あずみ!心配ないよ、俺が一緒だから、怖くないから・・・・あずみ!・・・・」
俺はいつしか、彼女の事を、呼び捨てにしていた。
Posted by PSPスタッフ at
12:00
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