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2010年04月27日

ポルノ映画1979



1979年春・・・。


俺と友達のI君は、高校2年になろうとしていた。
つかの間の春休み、俺達は、どっちかの部屋で寝転び、おぼえたてのタバコをふかし、『JAPAN』『チープトリック』『ロッドスチュアード』などのレコードを聴いていた。
早い話が・・・・だった・・・。
外は、春のいい天気なのに、俺たちにはやるべきことがない。
ただ、だらだらと、何の目的もなく、おもしろくもない冗談を言い合い、顔を見合わせ、せせら笑いをする。
そして、どちらともなくこう言う。
「なんか、おもしれえことないかな~・・・。」と。
しかし、おもしろいことなんか、そう簡単にみつかるわけもなく、ただひたすら、だらだらと・・・。





少年時代は誰でもそうだと思うけど、「おもしろいこと」が、転がってきそうな気がする。
しかし、人生はそうそう甘くはない。
「おもしろくするため」には、自分たちで、なにかしらの行動をしなくちゃいけない。
誰も、俺達なんかに、「はいどうぞ、おもしろいことですよ、これは・・」などと言って、浮き輪を投げてはくれない。
「日々をおもしろくするには、行動をしなくちゃならない・・」と、16歳の少年二人は、考え出していた。




「なあ、ポルノ映画見に行かねえ?」
さんざん悩んだあげく、『行動』するために、選んだ事がこれだ。
『ポルノ映画を見に行く』
とまあ、情けないように思うかもしれないけど、当時としては『すばらしい目標』だったんだ。
『高速道路無料化』に、匹敵するような、すばらしきテーマだ。






なあ、ポルノ映画見に行かねえ?」と、俺。
「いいねえ~、ポルノ映画!けど、やばい、補導されちまうぜ」と、I君。
「捕まらないようにするにはどうしたらいい?」
「う~ん、富山とか岐阜とか行って、見るとか・・・」
「それだと、汽車賃がかかる」
「時間もかかるしな」
「てっとり早く、ポルノを見るためには?」
「う~ん・・・」




俺達は考えた。
青春には、目標が必要だ。
その、目標が、日々をよりよいものにする・・・うんうん・・・。






変装しよう」と、I君。
「例えば?」と、俺。
「ようは、高校生に見られなければいい。作業服に作業帽子、作業靴、これだったら、立派な労働者階級だろ?」
「なるほど、それだったら、オヤジのものがあるから、すぐにそろえれる」
「チケット売り場でこう言うんだよ、『大人2枚』って」
「もし、あやしまれたら?」
「そんときは・・・・」
「逃げる・・・」
「例えどっちかが捕まってもな」
お互い、チクらないようにしようぜ
「もちろん・・・だって、友達だろ?」
「・・・うん・・・」




と、こんな感じの会話が交わされ、2日後に決行された。




映画館は、安川通りからちょいと入る、京極大映
日活ロマンポルノ3本立て。
たしか・・・「赤い教室」ほか2本





俺とI君は、作業服に作業靴(工業高校なので、とりあえず持っていた)、帽子は作業帽がなかったため、普通のCAP、俺はダウンタウンブギブギバンドみたいなサングラス、I君は、ジョンレノンみたいなサングラス
かえって目立つような気もするけど、しかたがない。
時間は止まらないし、やめる気もない。
目的に向かって、がむしゃらに突き進むのが、『青春』である。





俺達は映画館に向かって歩き出す。
そして一回、通り過ぎてしまう・・・。
「おい!なにやってるんだよ!入るんじゃねえのかよ?」と、I君。
「わりいわりい・・・今度こそ!・・・」
再び映画館へ・・・。
「・・・大人2枚・・」
「はい・・・あの、ポルノですけどいいですか?」と、窓口のおばちゃん
「・・・はい・・・」と、俺達。
『ポルノですけどいいですか?』と言う言葉に、いささかビビッたものの、後戻りはしない。


何回も言うが、目的に向かって、がむしゃらに突き進むのが、『青春』である。


俺達は、禁断の扉を開けた・・・。






休憩時間のトイレ・・・
俺達は、並んでしょんべんをしようとしていた。
しかし出ない・・・。
俺はI君の、ち○こを見ると、カチカチで上を向いている。
もちろん、俺もだ。





俺達は、館内では、離れて座った。
なぜならば、もし片方が捕まった時、もう片方だけでも逃げられるようにだ。
そして、1本目のポルノ映画が終わると、「トイレで落ち合おう」という、作戦にしていた。
なんて、綿密に練られた計画だ。
すばらしい・・・。



「やべえ・・・しょんべん出ねえよ・・・」
「・・・なんか、他のものが出そう・・・」
そう言い合って笑った。
トイレに別のお客が入ってきたので、笑いを殺した。
別のお客は、さっさと済ませ、出て行ったけど、俺達のしょんべんはとうとう出なかった・・・。





こうして、俺達は、映画館を無事出られて、「じゃな・・」と言って別れた。




ポルノ映画の感想自体は特にない





確かに興奮しただろう
そりゃそうだ。
大きなスクリーンで、女の人が、裸でベットシーンを演じるのだからね。
しかし、それを上回る、「捕まるんじゃないか?」という恐怖。その、ドキドキ感が、性的興奮を上回っていた。


なにはともあれ、俺とI君は、目的を決め実行した
そう、それこそが重要なんだ!
目的を決め、行動することが重要なんだ。




春休みが明け、他の奴らに「俺、ポルノ映画行った・・」と言うと、「マジかよ~」てな感じで、ヒーローになった。
俺は、得意げに、みんなに作戦のあれこれを教えた。
何人かの奴らは、その後、行ったみたいだった。



俺達は、もうすぐ、17才になろうとしていた・・・・。




BYナリハラ  
Posted by PSPスタッフ at 09:11Comments(2)