QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 4人
プロフィール
PSPスタッフ
PSPスタッフ
オーナーへメッセージ
Sponsored Links

2009年02月13日

秘密基地1974 VOL4

秘密基地1974 VOL4
~2002,9月 東京~

俺は荷造りをしている。
今まで住み慣れたマンションを出て行くためだ。
先月、妻との離婚が成立した。
昨日が妻の引越し日、そして今日が俺の引越し日。
お互い、顔を合わせないように、悲しみの中の時間差攻撃だ。
人生に、『絶対』はない。
輝く未来や、穏やかな家庭も、夢物語で終わってしまった。
俺は40歳になっていた。



よくある話だが、その時、アルバムに挟まった、一冊のノートを見つける。
『秘密基日誌 1974年』と書かれている。
俺は一瞬『なんだろう?』と思ったけど、ページをパラパラとめくるうちに、『そんなこともあったけな~』という想いに変わった。
俺は、そのノートをバックに入れた。



俺は田舎に帰ろうと思う。
親父はすでに死に、お袋は生きている。
家業である『魚屋』のシャッターは閉められて、もう5年になる。
『魚屋でもやろうかな?』なんてことを、ぼんやりと考えていた。


家に帰るとお袋がいた。
お袋は「馬鹿だね、お前」と言って出迎えてくれた。
その夜は、久しぶりに、お袋の味噌汁を飲んだ。
胸に沁みた。
泣きたかったけど我慢する。
もう、泣くには、似合わない年になっている・・・。



『秘密基日誌 1974年』を読んでみた。
「へえ~、そんなこともあったっけ・・」などと独り言を言い、小学校6年生の頃を思い浮かべた。
「アキラ、ツネ、ヤマジ・・」
久しぶりに呼ぶ、昔の友達の名前は、やけに照れくさく感じた。



俺はもう一度、あの秘密基地の場所に行ってみようと思う。


なぜ?
思い出に浸るためjか?
いや、違う、違うんだ・・・・。
読んでいるうちに、いくつもの『不可解』に出くわす。
いくつもの『不可解』・・・。
この『不可解』さが、俺の心に引っかかる・・・。
いろんな記憶が、よみがえってくる。
よみがえれば、よみがえるほど、『不可解』さは増してゆく。
「なぜだろう?」
俺は、その夜、寝るのを忘れて、1974年をさまよった。




秘密基地があった山は取り壊され、そこにはホテルが建っていた。
お袋の話によると、5年ほど前に、山を削り、平地にし、全国でチェーン展開する、ホテルが建ったらしく、1974年の風景とは全く違っていた。
俺はその大きなホテルの前でたたずみ、しばらくは途方にくれたが、しかたがないんで、ホテルのラウンジでコーヒーを飲むことにした。
ウエイターに話しかける。
「昔、ここには、神社や公園があったんですよね?」
ウエイターは「転勤なので、詳しくはわかりません」と答えた。



行き場を失った俺は、ホテル内にある、お土産売り場をぶらぶらしていた。
偶然とはいろんな瞬間におとずれる。
いや、・・・だから偶然と言うのだろう。
その時、人は「いや~、偶然だな~!」と言う。
俺も、例外ではなかった。



「シャケ?シャケか?・・・」と昔のニックネームを言われ、振り向いてみると、40歳になったアキラが立っていた。
ホテルのユニホームを着て、『フロントマネージャー』と書かれたネームバッチを着けていた。
俺はもちろん言った。
「いや~、偶然だな~」と。



~アキラとの会話~
「シャケ、お前がここへ来た意味が俺にはわかるよ」
「わかるのか?」
「ああ、秘密基地があった場所だしな・・・不思議に思ったんだろ?、大人になるにつれて、時代が進むにつれて、あの場所での出来事が不可解に思ったんだろ?」
「どうして、わかる?」
「ツネも、ヤマジも来たよ。ツネが4年前、ヤマジが2年前だったかな?奴らも、今のシャケと同じ思いでここに来たよ。俺も最初は
このホテルの本社勤務だったんだ。でも、この町にチェーン店を出すということで、出身者である俺に転勤命令が出たんだ。来てびっくりしたよ。だって、俺達の秘密基地の場所に建てられているんだからね。偶然といえば偶然なんだけど、なにか運命みたいなものを感じたよ。シャケも、いつかここに来るかな?って、実は思ってたんだ」



俺はアキラに、秘密基地日誌を見せた。



「・・・・なあ、アキラ・・・笑わずに聞いてくれるか?」
「笑わないよシャケ、お前の言いたいのはこうだろ?」アキラは続けた。「どうして1974年の山の洞窟に、存在するはずもないCDや携帯電話があったのか?そのほかにも1974年では説明がつかないいろんな物が出てきた。そうそう、日本兵でさえあの空間にいた。なぜだ?・・・ってことだろ?」
「その通り」
「はっきり言うと、この場所は、時間がゆがみやすい空間なんだよ。わかりやすく言うとタイムスリップだ。いつもってわけじゃなく、温度や時間や湿気や、太陽や月の位置によって、タイムスリップする」
「・・・このホテルが?」
「いや、正確に言うと、ホテルの地下機械室」
「地下機械室?」
「ああ、俺も最初はそんなはずないと思っていた。このホテル勤務になって1ヶ月くらい過ぎた頃、俺はその機械室の見回りに行った。ホテルの備品が入っている社用BOXを抱えてね。そのBOXを床に置き、点検を済ませて振り返ると、ゆっくりと消えたんだ」
「・・・消えた?・・・BOXが?」
「ああ、まるで、色が薄くなっていくようにゆっくりとゆっくりと、そして消えた」
「・・・・・・・・」
「信じてもらえるか?シャケ」
「・・・ああ、信じるよ、もちろん・・・・アキラ、ちなみにそのBOXの中は?・・・」
「ホテルで使わなくなったBGM用CD20枚ほどと、社内用携帯電話だ」
そう言って、アキラは秘密基地日誌のページをめくり、12歳の俺が書いた、『銀色の小型フリスビー』と『小型電子計算機』を指差した。
まさに・・・・ビンゴ・・・・だ。



俺とアキラは、ホテルのティールームでコーヒーを飲みながら話した。
アキラはまるで「待ってました」という感じで、簡潔に話をまとめた。
俺が、ここに来るのを待っていたかのように。



「あの、日本兵はどう思う?覚えているだろ?アキラ」
「ああ、覚えている。確か、『まだアメリカ兵がうろうろしている・・・』って言ってたな。彼の名前は、山本清次郎昭和22年にこの場所で死んでいる。戦争に行き、帰っては来たものの、精神を病み、この場所を戦場だと思い込み、さまよい、そして死んだ。さまよっている時に、きっと一瞬タイムスリップしたんだろうね」
「・・・・アキラ、どうしてそこまでわかる?」
「いろいろ調べたんだ。図書館で昭和22年の新聞を閲覧してたら、その記事が出てきた。顔写真入りで、死体はあの洞窟で発見されたらしいよ。俺が見た、一瞬の彼の顔と新聞の顔写真は、一致している」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




アキラも仕事があったため、俺達は別れた。
別れ際、アキラは言った。
「なあ、シャケ、このことは秘密にしておいて欲しい。へんな噂が出ると、このホテルが・・・・」
「アキラ、もちろんわかってるよ・・・」




俺は実家の魚屋を、コンビニにした。
大手コンビニのチェーン店店主だ。
また、1からのスタートだ。




アキラとは、その後たまに酒を飲む仲になった。
最初は、他人行儀なところもあったけど、何回か会ううちに『昔』のような関係に戻れたと思う。



2002年暮。
アキラが声をかけ、あの4人がホテルのバーに集結した。



ツネは携帯電話会社の主任になっていた。
1974年に「世界中で話せるトランシーバーがあればいいのにな・・・」と、話していただけあって、携帯電話会社勤務はうなずける。
「これから、まだまだ携帯は進化するよ・・・」と、ビジネスライクに話していた。



ヤマジは海上自衛隊。
デブで、階段がなくては、基地にも登れなかった男が、日本の海を守っている。
もうデブではなく、がっちりとした体つきになっていた。
「船に乗るときは、アダルトDVD10本は持っていくよ。じゃないと、やってられないぜ、健康男子としては・・・・」と言っていた。
ヤマジらしさは、失われてはいなかった。



アキラは、このホテルのマネージャー。
甲子園やプロ野球の夢は、見事に消え「人生はそんなに甘くないよな・・・」と笑った。
しかし、彼のリーダーシップは、このホテルでも見事に発揮されるだろうと思う。



俺は、コンビニ店長の1年生。
土曜と日曜をたまらなく好きだった男が、休み関係なく働く職業を選んだ。
人生とは、そおゆうものだ。



俺達は、遅くまで、酒を飲み、笑い、話し、時には歌った。



しかし、1974年の秘密基地での不可解な出来事は、一切口にしなかった。



「わかってるよ、アキラ、ここで働く君に迷惑をかけるような事は言わないさ・・・」
みんな、心の中で、こう言っていたに違いない・・・・・・。
人はそれを『友情』と呼ぶのだろう。


                  ~~END~~

BYナリハラ










スポンサーリンク
Posted by PSPスタッフ at 11:46│Comments(6)
この記事へのコメント
ホントの部分は・・・どこ?
Posted by ネコ先生 at 2009年02月13日 12:13
魚屋→シャケ

わたし的には新鮮なあだ名です。
魚だけにー
Posted by C  at 2009年02月13日 14:58
ネコ先生様
結局、ホントの部分は、友達と基地を作ったってところだけです。あとは、嘘でした。

C様
新鮮・・・魚だけに・・・うまいですね、笑点的に言うならば、『座布団一枚』です。
Posted by narihara at 2009年02月13日 18:25
なりさんの文は魔力ありすぎ!

いつも引き込まれる。
(;´Д`)
毎回楽しみにしてますよ!

あ…



LIVEしてぇなぁ…
Posted by カズ at 2009年02月14日 05:01
カズ様の言われるように私も引き込まれ毎回、楽しみな「妄想話し」です。過去にも「赤い灯台」「三重県の海に浮かぶ島」「山の中で出会った口のきけない女の子の話し」などなど、本屋さんに並ぶ小説本より、読み応えありますよ。次回も期待してます。
Posted by 古川やんちゃ at 2009年02月14日 07:30
カズさま
お久しぶり!ご評価ありがとうね。LIVE,また電話します。

古川やんちゃさま
どうもどうもです。ほめすぎですよ。ありがとうございます。今後も、頭の中で、旅をしたり、レイプしたり、殺人をやったり、しますね。
Posted by narihara at 2009年02月14日 16:25
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。