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2008年11月11日

NO GET BACK ~GET BACK~

NO GET BACK ~GET BACK~

正直に言うけど、キスまでしかしなかった。
『なぜ?』と、思うかもしれないけど、空腹と疲れと、1970年に死んでしまったカップルの事を思うと、俺は勃起しなかったんだ。
いや、空腹と疲れが原因じゃないな。
『明日は戻れるかもしれない』とゆう期待感、『戻れないかもしれない』という不安感、両方が入り混じり、『体力を温存しよう』もしくは『早く寝よう』という、無言の結論に達したのだろう。

あずみより先に目覚めた俺は「・・・することがすべてじゃないさ・・・」と、独り言をつぶやいた。

あずみも目が覚め、小さくあくびをしていた。

携帯を見る・・・AM6:30・・・外は少し明るきなってきている。

「よし、行動開始」

俺はリュックに、義男君と孝子さんの日記、それからカセットレコーダーに入っているカセットテーップを取り出して入れた。
置いていこうと思ったけど・・・・なんて言うのかな?・・・・うまく言えないけど・・・・。


あずみが俺をつっつく。
「何?あずみ」
使い捨てカメラを持っている。
「記念写真?」と俺が言うと、うれしそうに首をたてに振った。
外に出て、俺が右手を伸ばし、小屋をバックに、二人が入るように、「じゃ、いくよ、ハイポーズ、カシャ・・」。


東の小川ずたいに下る・・・・やがて、左手に乗鞍が見える・・・・間違えない、この道だ。

途中、大滝があった。
「あずみ、この滝じゃないのかな?二人が身を投げたのは・・・」
あずみは、花を摘み束にして、滝に投げ入れた。
俺たちは、手を合わせ、冥福を祈った。


歩きながら携帯を見る、しかしバッテリーが切れていた。
もう時間が、わからない。


太陽は、次第に西の空へ・・・・。


俺たちは、早足になる。


もちろん、体力も気力もギリギリだ。
この先に、もし民家がなかったら・・・・、きっとそれは・・・死を意味するかもしれない・・・・。


俺もあずみも休まない、歩きながら水を飲む。


歩く、歩く、歩く・・・・。


俺は心の中で祈る『義男君、孝子さん、こっちでいいんだよね、こっちでいいんだよね・・・』と。


あずみは、胸に右手を当てている、彼女も祈っているのだろう。


『義男君、孝子さん、昨日、日記を読みながら、あずみに言いかけてやめたことがある。それは、ひょっとして、俺とあずみを、あの山小屋に導いたのは、君たちじゃないのかい?君たちは、知ってもらいたかったんだろ?君たちの最後をさ。君たちが、最後の瞬間をどう生き、どこで死んだのかをさ。君たちの魂は『供養』してほしいんだろ?君たちは30年間待ち続けたんじゃないのか?君たちと同じ年齢で、同じ感性で、その魂に寄り添えるカップルをさ。それが、俺とあずみだったんだろ?どうだい?図星だろ?
・・・・・俺たちは生きて、君たちが見られなかった20世紀を見るよ。俺たちが君たちに会えるのは、まだまだ先だよ。その時が来たら、分かり合える友達になれる気がするよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから、だから、街並みが・・・民家が・・・見えますように・・・・・』


真っ白の紙に、いくつもの絵具を、こぼしていくように、青・・・赤・・・・黒・・・紫・・・黄・・・朱・・・緑・・・・、70年のバンドが、大麻を吸いながら演奏している・・・・煙が照明に映える・・・・女性が一人・・・・孝子さん?・・・・「サイケデリック!」・・・・・。


PM19:30 立野時村、民宿光屋。


俺とあずみは、宿泊をお願いした。
おかみは「これはこれは、遠いところ、よう来てくんさった」と言った。


何はともあれ注文した。
みそラーメン、親子丼、とんかつ、豚汁・・・。
タバコも自販機で買い、立て続けに3本吸う。
俺たちは、満腹で動けなくなる。


1時間後、風呂。
俺が入ると、湯船に『あか』が浮かんだ。
髭をそり、ねちゃつく頭は2回洗った。


そして部屋。
俺たちは用意された浴衣に着替え、ただただ呆然とする。
俺は、何か言葉を捜したが、なかなか見つからない。
あずみも疲れきった様子で、布団の上で膝を抱えている。
俺たちは一つの布団で抱き合って眠った。
「戻れたね」と俺が言う。
あずみは小さくうなずく。
その瞬間、眠りに引き込まれる。
したがって、SEXはしていない・・・・。


朝、俺が起きると、あずみは居なかった。
枕元には、メモ帳が置かれていた。


『ありがとう。もし、一人だったら、たぶん死んじゃってたよ。でも、本当は死のうかな?と思って、あの山に行ったんだ。理由は失恋です。大好きだった彼が、喋れない私と別れて、健康な人とすぐ結婚しちゃったから。でもいざ死ぬとなると、怖くなり、山をさまよっている時にあなたに会えて(あっそう言えば名前聞いてなかったね)、すごくうれしかったよ。キスも暖かかったよ。抱きしめられて眠って、すごくすごく安心したよ。本当は、いっぱいエッチもして、そばにいたいけど、きっと、健康な人がお似合いだよ。
ミスチルの『口笛』、うまくなかったけど、桜井さんのボーカルより、グッときたよ、ホントだよ。あずみを生きて戻してくれて、ほんとうにほんとうにありがとう。忘れないよ、どこかのお兄ちゃんへ・・・あずみ。』


時間は、11時。


俺は、部屋のカーテンを開け、俺たちがさまよった山を見つめる。


山はおだやかな表情を見せている。


俺は、山を眺めながら、途方に暮れる・・・・・。







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Posted by PSPスタッフ at 12:00│Comments(5)
この記事へのコメント
無事に山から下山し宿にたどり着き安心しました。彼女が朝、感謝の置き手紙を残して居なくなっていたことを思うとキスだけで正解だったね。その方が、イイ思い出として残るから。お互いが、「好き」だというような意思表示も言葉も交わさないままの別れ…何か泣けますね。
Posted by 古川やんちゃ at 2008年11月11日 14:52
古川やんちゃさま
泣いてくれますか・・・サンキュす。明日最終回です。やれやれです。
Posted by narihara at 2008年11月11日 21:02
とりあえずは無事下山、ホッとしました。
しかし彼女の中では、「健康な人」と「そうでない自分」と言う負い目で人を区別している、ってことが残念でなりませんね。無理もないのでしょうが。
十分にコミュニケーション取れてますよね。切らさないよう、たくさんメモ紙を持っていれば良いだけで。
モトカレに対しても「健康な人と結婚した」と言う見方しか出来ないのはやむを得ないことなのかな。

物語は、ハッピーエンドとバッドエンドしか無い訳ではなく。こんな結末も心に染みる・・・・・と思ったら、もう1回あるんですね。あーよかった(笑)
Posted by ギブソンギブソン at 2008年11月11日 22:17
ギブソンさま
名前がいいですね・・・ギブソン。俺も「テレキャス」って、名のっとけばよかった。そうなんですよ、もうちょうい、おつきあいください!
Posted by narihara at 2008年11月12日 08:47
ハンドルネーム決めるのって難しいですよね。
実は以前、ひだっち以外でブログを始めたんですが長続きせず・・・・・
その時のハンドルネームに感情移入できなかったのが原因かな?って思ってます。
その人物になりきれないと言うか。

と言うわけでバンド辞めて2年にもなるくせに。サンダーバードはケースにしまいっぱなしのクセに・・・・
「ギブソン」がしっくりきます。

そんなんだよなー。
人間関係のゴタゴタで、かつて「もう絶対バンドやらない」宣言したことがあります。
未練がある。今、ようやく素直に言えるようになったかな。
でも自ら動き出すモチベーションだかバイタリティも、今はなくって・・・・ってなハンパ者でございます。
Posted by ギブソンギブソン at 2008年11月14日 00:51
 
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