QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 4人
プロフィール
PSPスタッフ
PSPスタッフ
オーナーへメッセージ
Sponsored Links

2008年08月19日

Telephone2

Telephone2

『篠島』に着いた頃には太陽が沈んでいた。
微かな波の音と、漁船のエンジン音が聞こえるだけの、小さな島だった。

俺は結局、入金された10万円を下ろし、崩壊寸前の『ワゴンR』にガソリンを入れ、地図を買い、『篠島』の位置を確認し、上陸方法を調べ、『師崎』という港からカーフェリーに乗り、約束の時間内に、島に上陸した。

携帯が鳴る・・・非通知・・・。
「着いた?」とミーナの声。
「ああ、着いたよ」と、俺は低いトーンで答えた。
「来ると思ったわ」
「・・・どういたしまして・・」
ミーナの声は、心なしか弾んでいたように聞こえる。
金によって、自分の思い通りの行動をとった俺を、歓迎しているような声だった。
「さて、これからどうしたらいい?言っておくけど、ヤバイ事はゴメンだ。俺だって少なからずモラルは持っているんでね。俺が、あんたに従ったのは、完全に信頼したってわけじゃない。そこらへんは明確にしとくよ、悪いけど・・」
「モラルは持っているけど、夢や希望がないってことね」
「・・・・・」彼女の言うとおりだ。
「まあ、いいわ、お疲れ様。また連絡するわ・・」
「おいおい、ちょっと待てよ、これからどうすればいい?」
「フフフッ・・・、これからねえ、とりあえず民宿でも泊まってタコ料理でも食べたら?お金もあるんだし、篠島のタコってけっこうおいしいのよ、じゃ、また連絡するわ」
「おい!ちょっと、待て!」
「・・・・・・」
電話が切れた。


俺はミーナの言うとおり、大して綺麗とも言えない民宿に泊まり、『タコ料理』を注文した。
「彼女の思い通りにはならない・・」と、強固な意志を示そうとも思ったが、結局は彼女に従い、おまけにアドバイス通り『タコ』を注文する・・・腹立たしさはあったものの、タコの刺身もタコシャブも、彼女が言ったとおりおいしかった。
「・・・うめ~な・・・」と呟いてしまった。


篠島に来て3日目の朝。
携帯が鳴る・・・非通知・・・ミーナ。
「まだ篠島にいるの?何も無い島なのによくいるわね。私だったら1日が限度ね、スキューバーダイビングが目的だったら話は別だけどね、ゥフフフ・・・」
「あのな!」俺は声を荒げた。「あのな!ちょっと勝手じゃないか?篠島に行けと言われ、来てみたらなんの連絡もない、非常識だ!」
「お金は払ったわ?違う?」
「お金の問題じゃない!」
「じゃあ何?私は篠島に行くという指令を出した、あなたはそれを実行した、篠島に行くという指示以外は何もお願いしてなかったんじゃない?」
「しかし・・・例えば、この島にとどまれとか、帰っていいとか、何らかの言葉が・・」
「お疲れ様・・・とか?」
「まあ・・・そおゆうことだけど・・」
「フゥ~、」ミーナはため息をついた、そして続けた。「だから言ったでしょ、民宿に泊まって『タコ』でも食べれば・・・って」
「・・・君のおかげで、おいしい『タコ』が、たらふく食えたよ」


俺もだんだんと、どーでもよくなってきた。
いい意味でも、悪い意味でもだ。


確かにこんな非常識極まりない事に、常識を振りかざす俺がどうかしている。
俺が悪い。
しかし「俺が悪かった」とは言わない。
俺にだって、残飯のような意地がある・・。


「20万振り込んであるわ。「信濃川をきれいにする会」というボランティア団体が、今日と明日の2日間、川の下流で清掃活動をしてるわ。そこに参加して、その会の幹部に認められる。これが条件よ」
「おいおい、なんだよそれ、幹部に認められるって、どおゆうことだよ?」
「あなた、まだわかっちゃいないのね?それを自分で考えて答えを見つけるのよ、達成できれば次の依頼がくる」
「君と・・いや、ミーナとまた話ができるってわけだ・・」
「そのとおり、報酬もアップする、今のお金をもらって降りるのも自由よ、その場合、もう二度と依頼は来ない」
「なるほど・・・クイズミリオネア方式みたいだな?」
「フフフッ・・・おもしろいわね、でも残念、私、みのもんた好きじゃないの。じゃ、時間が無いわよ。やるなら早めに動いて」
「ミーナ、切るなよ、もう少しさあ・・・」
電話は切れている。


腕時計を見る。
AM10:30.
「やるか?やめるか?」
一分間の自問自答。
「よし、やるか」


俺は、民宿の清算をし、カーフェリーで篠島を離れ、潰れかけのワゴンRを走らせ、銀行を見つけ、ATMで入金の確認、20万が『M』から振り込まれている。その金をジーンズの後ろポケットにねじ込み、北へ向かう。高速に乗り、いくつかのジャンクションで方向を変え、サービスエリアで、サンドゥイッチと缶コーヒーとマイルドセブンとクールミントガムを買う。店員に1万円を渡し「お釣りはいいから・・」と、今までの人生の中で言ったことがない言葉を口にする。


なんだか、自分の中に覚醒を感じる・・・。
あくまで薄っぺらな、極めて微弱な覚醒を・・・。


俺はあるテーマを考える。
『ボランティア団体の幹部に認められる』という、あいまいなテーマについて。
『認められる』という意味について。
『認められる』という定義について。


「信濃川をきれいにする会」というボランティア団体が、下流で清掃活動をしていた。
場所は比較的すぐわかった。
「信濃川をきれいにする会、清掃活動中」という、看板が所々に掲げられている。
高台から見ると、総勢300~400人って感じか。
時間は夕方4時をまわっている。


「さて、どうする?」
俺は、たて続けに吸って、残り少なくなったマイルドセブンに火をつけ、善意の魂が寄り添う活動を見守る。
時間が無い。
行動を起こさなければ。
しかし、『認めてもらう』方法が浮かばない・・・。


「さて、どうする?」



NEXTLIVE23日(土)
“Display of Passion”
OPEN 19:30~ START 20:00~
adv 1000yen door 1400yen

《BAND》
○Bitch mam
○LAPIS
○SPREAD GERM

BYナリハラ



スポンサーリンク
Posted by PSPスタッフ at 15:35│Comments(2)
この記事へのコメント
ナルトと同じくらい早く続きが読みたいっす。
Posted by チトシ at 2008年08月19日 17:25
ちとし様
お久しぶりです。9月20日「アンプラグド5」出演ありがとうございます。12月にビートルーズもやろうね。
Posted by narihara at 2008年08月20日 10:53
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。