2012年10月24日
WHAT’S GOAL
まったく行く当てがないのならば別だけど、ほとんどの奴は、ある程度の行き先を持っている。
もしそれが、少年少女であるならば、夢。
まちがえなく夢だ。
彼もそうだ。
『野球選手』『アイドル歌手』『弁護士』『ファッションデザイナー』『医者』・・・・。
そのために努力はする。
努力は必要不可欠だ。
しかし、なかなか、報われないのもまた事実だ。
この道の向こう側には、夢の実現、という、大イベントが待っている。
だから、どんなに苦しくても、誰かに邪魔されようとも、右足をくじこうとも、この道を行く。
雨でびしょ濡れになり、熱さで熱中症になり、雪に凍えながらも、とにかくその道をゆく。
リタイヤは考えない。
だって、夢の実現が、待っているのだから・・・。
その道を外れれば、暖かいスープと、暖炉と、毛布が用意されていても、そちらには行かない。
過酷な道の端で、たき火をし、膝を抱えラークを吸う。
様々な方向から、誹謗中傷が聞こえる。
「・・・だから、言わないこっちゃない・・・」
「・・・あの時、俺達と一緒に行っていれば・・・」
「・・・かわいそうに、パンでもあげようかしら・・」
しかし、彼は、そのパンを受け取らず、歩き続ける。
足取りは決して軽くないし、不安が希望を覆いだしている。
『意地』『プライド』『誇り』が、ガラス細工のような精神を支えている。
しかし、この道を降りる時が来たようだ。
この道の途中で知り合った女の子、そして生まれた子供。
「・・・、意地を張らなくていいのよ・・」という彼女の言葉、「・・・オギャー・・・」と鳴く、赤ちゃんの声。
彼は、深くため息をつき、ボストンバックを担ぎ直し、この道の横にある雑木林のほうへ入って行った。
リタイア。
それから彼は、アルバイトをしながら、しばらくは粛々と暮らした。
雨水を飲み、木の実を食べる、と、そんな感じだ。
赤ん坊をあやし、育てる。
ベビーカーに子供を乗せ、奥さんと、あたりを散歩する日々。
一瞬、東の空の下に、きらりと光る『道』が見え隠れする。
彼は、見て見ぬふりをし、ベビーカーを押す。
ある朝、奥さんがこう言う。
「・・・、また、あの道に戻りたいんじゃないの?・・・」
「・・・でも、戻ったら、路頭に迷う可能性だってある・・・」
「・・・大丈夫、3人一緒だから・・・」
「・・・なるほど・・・」
彼と奥さんと子供は、雑木林を出て、例の道に戻った。
「・・・次は、何を目指すの?・・」
「・・・ゆっくり考えるさ・・・」
Byナリハラ
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Posted by PSPスタッフ at 09:30│Comments(0)