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2012年10月04日

100万$BABY

100万$BABY




その女の前には、いつも行列ができていた。
「・・・僕と付き合ってください・・・」という、男の列だ。
そして彼女は、一人一人を見定る。
ルックス、身長、体重、健康状態、学歴、収入、ペニスの大きさ、フェチズム・・・・ETC.
彼女に与えられた、わずかな時間に、長い順番を待った男は、必死にアピールする。
「・・・僕と付きあえば、君を必ず幸せにする・・・」
「・・・僕と結婚すれば、世界各国のディナークルーズに招待するよ・・・」
「・・・僕を選んで欲しい。30年、いや、50年経とうと、君が満足するSEXを約束する・・・」
「・・・僕を奴隷と呼んで欲しい。君の奴隷として、一生を終わりたいんだ・・・・」
などなど、
男たちのアピールポイントは様々だ。
しかし、彼女は決まってこう言う。
「・・・ごめんなさい・・・残念ながら、あなたは、私の恋人としては、不適格・・・」と。
男達だって、簡単には引き下がらない。
「・・・なぜだい?悪いとこがあったら言ってくれよ!」
「・・・待ってくれ、きっと、君に好かれる人間になるから!」
「・・・もう少し時間をくれないか?どこが気に入らないんだい?」
「・・・お願いだ!捨てないでくれ!・・・」
彼女はクールにため息をつき、少しだけ笑い、「それじゃ、さよなら・・・」と言って、席を立つ。
彼女が去った後、彼女が吸っていたポールモールから、まだ煙が上がっている。
フィルターに、ピンクのルージュが残されている。
男は、彼女の残り香を感じ、吸いかけのポールモールを、唇に咥える。
そして、うつむき、煙を吐く。
「絶望」という名の煙を・・・。










彼女のことを、ちまたでは『100万$BABY』と、呼んでいる。
そのくらいの価値がある女、って事だろう。
実際、彼女は、容姿端麗で経歴などももうしぶんない。
街を闊歩すれば、ほとんどの男が振り返り、中にはその場で告白する男もいる。
彼女が迷惑そうな顔をすれば、近寄る男を取り押さえる男も現れる。
早い話が、彼女の争奪戦が始まるってわけだ。
そして、彼女は、その様子を少し離れた場所から見ている。
ちょっと斜に身構え、腕組みをし、人差し指を唇につけ、微笑んでいる。
「・・・気分がいい・・・」と、心の中ではそう思う。
これほどまでに、モテまくる自分を体感すれば、気分がいいのは当然だ。
100万$BABYと、呼ばれることにも、もちろん納得している。
「・・・そう、私は、100万$の価値がある女・・・」と。










しかし、彼女に振り向かない男が、一人だけいる。
労働者階級で、どうってことない男だ。
街の機械工場で働き、ラーメン屋で夕食を済ませる、どこにでもいる男だ。
彼は、彼女に媚びない、彼女に近寄らない、彼女を避ける、彼女に微笑まない。
定例会でもある、『100万$BABYを囲む会』にも、参加しない。
普通は抽選で参加者が選ばれるこの会に、なんと彼女からの『特別招待状』が届いたにもかかわらず、参加しない。
彼女は、しだいにこう思う。
「・・・なぜ、私に、なびかない?・・・」と。
「・・・こちらから、招待しているのに、無視するなんて失礼じゃない?・・・」と。
「・・・私に、なびかない男なんて、この世にいるはずがない・・・」と。
彼女は、少しばかりのプライドの傷を覚え、それに少々の怒りを感じている。
「・・・あの男は、鈍感?それとも馬鹿?」
そのわずかな怒りは、日々を追うごとに大きくなっていく
「・・・あの男は、鈍感?それとも馬鹿?」
このフレーズがリピートしている。











彼が仕事帰りにラーメンを食っているところに、彼女は現れた。
突然に、そして、研ぎ澄まされたナイフのように。
彼女の出現により、さびれたラーメン屋は、華やいだ空間へと変貌した。
ラーメン屋の親父は、どんぶりを落とし、居合わせた客の箸が止まる。
彼女は、彼の前に座ると、切りだす、一方的に・・・・。
「・・・いい加減にしなさい。私のほうから会ってあげるのよ。招待を無視するって、いったいどおゆう事?鈍感?それとも馬鹿?」
彼は、チャーシューを口にする。
「・・・なんとか言いなさいよ!あなたみたいな身分の人が私に巡り合うなんて、普通はできないのよ!」
彼は、残り汁を飲む。
「・・・なんとか言いなさいよ!」
そして彼は答える。
まっすぐに、彼女の眼を見て、堂々と切々と。
「よお、100万$BABYさんよ。俺は、あんたの列に並ぶつもりはねえよ」
「なんですって!」
「あんたさ、すべての男があんたを好きになると思ってるらしいけど、俺は遠慮しとくよ。あんたの列に並ぶのは、けつの軽いファック野郎がお似合いだぜ」
「・・・あなた、きっと後悔するわよ。私がもし、この怒りを、取り巻きの男たちに伝えたら、あなたを殺しに来るかもね!」
「上等じゃねえか!ちょうど失うものが何もないんでね、死ぬのもいいかもしれねえな。100万$BABYと言われたクソ女に唯一反抗した奴ってことで、石碑くらい立つだろう・・・」
「後悔させてやる!絶対!・・・」
「やれよ!この、アナル女!」
彼は、ラーメンの残り汁を彼女にぶっかけ、店を出た。
ラーメン汁で濡れた彼女は、怒りで震えていた。






その後、彼女は怒り、悲しみ、癇癪をだし周囲に当たり・・・・やがて、落ち着き、少し反省し、メイクを落とし、熱いシャワーを浴びた。






彼女は、今、彼の電話番号を探している。
彼女の胸が、初めてときめいている。











100万$BABY




BYナリハラ

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Posted by PSPスタッフ at 11:09│Comments(2)
この記事へのコメント
カッコイイですね ナリハラさん 僕も こんな男目指します 実話ですか?
Posted by 旅人の一人 at 2012年10月04日 11:27
旅人の一人さま
実話ではまったくないですし、実際、列に並ぶ側の人間なんで、よろしくお願いします。
Posted by narihara at 2012年10月04日 11:48
 
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