2010年04月28日
STRIP1980

1979年夏休み
友達のI君とS君が俺の部屋に来た。
彼らは、名古屋の飲食店で働いているA君のところに、遊びに行った帰りだった。
真夏のクソ暑い太陽がじりじりと照りつけてはいたが、俺の部屋には扇風機しかない。
俺とI君とS君は、その風を奪い合うようにして、代わる代わる扇風機の前に立っていた。
「あっちーぜ・・・マジで・・・」と、言いながら・・・。
俺達は17歳になっていた。
「名古屋どうだった?おもしろかった?」と、俺。
「まあまあ」とI君。
「暑かった」と、S君。
「なんか、おもしろいことなかったの?」と、俺。
なぜ、俺は彼らと一緒に遊びに行かなかったのだろうか?
だいたい俺達3人はいつもつるんでいた。
俺だけ、一緒に行かなかった理由がいまだに思い出せない・・・。
「どっか行った?」と、俺。
「・・・そうそう、ストリップ行ったよ」と、I君。
「すごかったな、ストリップ・・・。全部見せたぞ・・・」と、S君。
「一緒に、行けばよかったのによ・・・」と、I君。
「お○○こ、丸見えだったぞ!・・」と、S君。
二人は、笑っている。
でも、俺は笑えない。
なぜか、悔しい・・・。
『なんで、あいつらだけ、ストリップ行って、俺だけ仲間はずれなんだよ・・・。』と、そんな思いが交差する。
俺は、若干、すねる。
「・・・あ~そう・・・へ~・・・よかったじゃねえか・・・」的な言い方になっていく。
「おい、すねるなって、次、名古屋行ったとき、A君に連れて行ってもらえばいいだろ?」と、I君。
「すねるなよ・・・。まあまあ、タバコでも吸って・・・」と言って、S君は、俺の唇にマイルドセブンをくわえさせ、100円ライターで火をつけた。
I君とS君の優越感。
俺の、やるせない気持ち・・・。
その夜、名古屋のA君にも抗議の電話を入れる。
「なんだよ、きたねえよ、お前らだけでよ・・・」と、俺。
「しかたねえだろ!あいつらがストリップ見てえって言うんだから・・」と、A君。
「俺だけハチかよ・・・」
「わかったよ、次連れてくから、な?」
「絶対だぞ」
「わかった、わかった、じゃ、冬休みに来いよ」
「先が長いな・・・」
「・・・お前よ・・・」
「・・・・ん?・・・」
「よっぽど、ストリップ見てえんだな・・・」
「・・・うん!・・・」
と、そんな感じで、2学期になった。
I君とS君は、ときおり俺をからかった。
「いや~、ストリップよかったね~・・あれ、行ってないの?」ってな具合に。
もう俺は、すねてはいない。
それほど子供じゃない。
「教えてください」と、素直に頭を下げ、ストリップダンサーがどのように、衣装を脱いで行ったかを、レクチャーしてもらった。
人間は、素直じゃなくっちゃね・・・。
余談になるけど、俺とI君とS君は、バンドを組んでいた。
S君はドラム。
I君はギターとボーカル。
俺はベースとボーカル。
3人で、バンド練習して、終わってから3人マージャンして、どっか遊びに行くのもだいたいこの3人。
そうそう、だから、『俺だけストリップ行けなかった・・』ってのが、若干ショックだったのだろう・・・。
1980年冬・・・。
残り少ない、冬休み・・・。
お正月を通過した関係で、お金は多少あった・・・ラッキー。
俺達3人は、汽車に乗り込む。
JR(当時は国鉄か?)で、名古屋に着くと、A君が出迎える。
「さて、ストリップ行こう」と、俺は切り出す。
「・・・う~ん・・・まあ、明日でもいいじゃん・・・」と、A君。
「パチンコ行こ、パチンコ」と、S君。
「腹減ったな、メシ食に行こ」と、I君。
なんか、みんな、ストリップに乗り気じゃない。
なぜだ?
そして翌日。
「なあ、ストリップ行こ・・・」と、俺。
「・・・俺は、いいわ・・・」と、I君。
「・・・俺もパス・・・」と、S君。
「5000円だしな・・・高いよな・・・やめようよ、ストリップ・・」と、A君。
「なんだよ!話が違う、約束したじゃねえかよ!」と、俺。
「一人で行けよ」と、A君。
「一人じゃ怖い」と、俺。
「・・・う~~ん・・・、じゃ、行くか?」と、A君。
余談になるが、A君は、俺らと同い年ながら、すでに社会人であり、SEXも経験していて、「いまさら・・・なんで・・・ストリップ?・・・」と、いう感じだったのだろう。
やさしいね・・・A君。
I君とS君はパチンコ。
「じゃな、健闘を祈る」と、言って見送ってもらった。
場所は、鶴舞劇場(今でもあるのか?)
俺はA君に連れられ、禁断の扉を開けた・・・。
赤、青、緑、のスポットライト・・・。
客席にぎっしりのおっちゃん達。
BGMは演歌。
足もとに転がる、缶ビールの缶。
たばこの煙の充満。
・ ・・・・・・・・・・・。
「どうだった?」と、A君。
「・・・う~ん、なんか・・・いまいちだった・・・」と、俺。
俺の母親とまでは、言わないまでも、それに近い年代の踊り子さん。
「は~い!どうぞ!」と言って、股を広げるポーズ。
おっちゃん達も、じゃんけんで勝った人がステージに上がり、下半身すっぽんぽんに。
それを、口や手で、射精に導く踊り子さん。
「な、わかっただろ?」と、A君。
「・・・うん・・・ストリップは、まあ・・・いいや・・・」と、俺。
その夜、A君のアパートで、朝までトランプして遊んだ。
17歳の少年には、やっぱりトランプがよく似合うみたいだ。
「よし俺の勝ち!」「なんだよ、おめー、きたねえ手使いやがって・・」
などと、笑い声に包まれたトランプゲームのほうが、すごく楽しかった。
しかし、おもしろいもので、のちのちストリップシーンを思い出すと、俺は勃起した。
数学とか国語みたいな、くだらねえ授業の時は、特にそうだ。
そんなに、いいイメージは残ってないのに、なぜか・・・たつ。
まったく、やっかいなものだ。
『行ってみないとわからない』
よく使われる言葉だが、俺はストリップで、そのことを学んだ。
『行ってみないとわからない』
『やってみないとわからない』
『付き合ってみないとわからない』
経験して、体感して、はじめてわかる意義や意味。
はずしてもそれはそれ・・・。
若い頃の過ちなんて、サッカーでできた切り傷みたいなもの。
ありがとうストリップ劇場。
その場所から、多くのものを学んだ。
BYナリハラ
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Posted by PSPスタッフ at 09:45│Comments(0)