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2009年11月07日

CROSSROAD3

CROSSROAD3

「来ると思ったよ」
「いるような気がしたよ」
俺達は、またあの場所で出会った。
ずいぶん前に、別れ別れになった場所、CROSSROADで・・・。




『堅実の道』を行く俺は、生あくびをかみ殺す。
何回も何回も。
俺は、工場でチームリーダーの称号を与えられ、来る日も来る日も、わずかな金で働いた。
堅実の道の特権であった、『最低限の保証』も、ここ数年の不景気で、保障が保障されないと言う、馬鹿げた状態にある。
したがって食卓のメニューが、一品減る・・・。
妻は、贅沢にあこがれを抱き、不機嫌になる。
子供は大きくなり、『要求』の度合いが増してゆく。
そして、俺は・・・・俺は、外のフェンスに持たれて、ラッキーストライクを吸う。
そんな時、奴の事を考える。
生あくびをかみ殺しながら、月を見上げ、『相棒』の事を考える。
「奴は、どうしているのかと?・・・」




『冒険の道』と行く相棒は、成功とはほど遠い人生を送っている。
今は、女のヒモだ。
女に飼われている、と言うべきなのだろうか?
時として女は、ヒステェリックになり、相棒を罵倒する。
「この役立たず!」
「ゴミ!」
「ただ飯食らい!」
と、そんな感じだ。
相棒は、脱力感を引きずったまま、路地裏をぶらつく。
ラッキーストライクに火をつけ、その煙を、北斗七星に吹きかける。
「・・・元気か?・・・」と、つぶやく。
誰に対してつぶやいているのかなんて、言うまでもない。




『堅実の道』を行く俺は、工場で右腕をやられる。
妻は言った「明日からのお金はどうなるの?」と。


『冒険の道』を行く相棒は、肝臓をやられる。
女主人は言った「とっとと、出って行って!」と。


俺は毛布にくるまって夢を見る。
CROSSROADにたたずむ、俺と相棒の夢を。

相棒もまた、駅のベンチで夢を見る。
CROSSROADでの別れる俺達の夢を。



俺達は考える。
「ちがう道に行った、あいつはどうしているのだろう?」



俺達の上空には、同じ夜空が広がっている。
俺達は、ずいぶんと離れた場所にいて、同じ感情を抱き、そして同じ夢を見る・・・。
CROSSROADの夢を・・・・・・・・・・。




「来ると思ったよ」と俺。
「いるような気がしたよ」と相棒。
久しぶりに会っても、最初に交わす言葉なんて、その程度のものだ。
男同士なんて、そんなものだ・・・・。




「タバコあるか?」
「ああ」
俺達はラッキーストライクをくわえ、一つのジッポで火をつける。
「昔も、こうしたっけな?」
「まあな・・」




風景はどんよりと色を失い、あいかわらず音はなく風もない。
あの時のままだ。




まずは、見栄を張る。
「どうしてる?」と俺は、聞いた。
相棒は、少し考えてから答える。
「・・・・、最高さ、東の山で金塊を掘り当てたんだ。今、女と暮らしてるよ。これがまた、いい女でな・・・」
「そうか、よかったな」
「お前は、どうだい?」
俺は、少し考えてから答える。
「・・・・、充実してるよ。勤務先で役職ももらったしな。子供もいる。あの時、『堅実の道』を選んで正解だったよ・・・」
「そうか、なによりだ」




薄暗い光線を放つ太陽?それとも月?今が昼なのか夜なのかさえ見当もつかない。




やがて、本音が出てくる。
「・・・実はな、すべてがうまく行ってないんだ・・・。『冒険の道』に行ったお前のことが、うらやましく思うよ・・・。あの時、俺もお前と一緒に、冒険の道に行くべきだったんじゃないのか?って考える」と、俺は告白した。
「・・・本当は・・・最悪なんだ。今は、女に食わしてもらっている。ゴミ呼ばわりされてな・・・、俺は、あの時、お前と一緒に『堅実の道』に行くべきだったんじゃないかって、最近特に強く思うよ・・・」と、相棒は激白した。
俺は相棒の肩を軽く叩いた。
相棒は俺の、腹を軽くパンチした。




俺達の前には2本の道が伸びている。
その、砂利に覆われた道は、地平線の彼方まで伸び、ぼんやりと風景と同化している。




そして結論が出る。
「これからどうする?」と、俺は言った。
「これから?」と、相棒は答える。
「そう、これからだ」
戻るしかないだろ・・・」
だろうな・・・」
「なあ、相棒、俺は、お前の成功を祈っているよ。どの道に行こうとな」
「炎のように・・・だろ?」
「・・・ああ・・・」
「前にも聞いたよ、その台詞」
「悪いな、他の言い方が見当たらない」
「ハハハ、いいよ、俺も同じ気持ちだからな・・・」




俺達は、もう1本ずつラッキーストライクを吸い、吸殻を靴底で消した。
俺は、靴紐を縛り直し、相棒はズボンのほこりをはらった。




「じゃな・・・」
「元気で・・・」




俺達は握手して別れる。
CROSSROADから伸びる、別々の道を歩き出す。
俺は、ちがう道を行く相棒に「がんばれよ!」と、大声を張り上げる。
相棒は、右手を軽く上げた・・・・。





CROSSROADは、存在する。
俺達人間の行く末に、いくつも存在する。
俺達は、その前で、立ち止まり、悩み、苦しみ、知恵を絞り、決断する。
正解なんてない。
しかし、どちらかを選ぶことが重要なんだ。
自分の意思で、自分の責任において、選ぶ、決断する。
そうやって、少年は大人になってゆくのだはなかろうか?







CROSSROAD3


CROSSROAD3


CROSSROAD3


CROSSROAD3



BYナリハラ
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Posted by PSPスタッフ at 11:01│Comments(2)
この記事へのコメント
読みごたえありましたね☆読んでいて情景が思い浮かびました。 面白かったです! 今、自分がこうしてるのもいくつかのCROSSROADを歩いてきたのかなと思うとなんか感慨深いものがありました。また次の作品楽しみにしています!
Posted by KEIKO at 2009年11月09日 08:47
KEIKOさま
読み応えあってよかったです。本当は、初回のみで終わりのはずだったけど、調子に乗ってしまいました・・・、チケットの件、連絡しますね。
Posted by narihara at 2009年11月09日 20:01
 
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