2009年04月17日
jukebox night
店に入るなり、コインを入れた。
「どうした？今日はご機嫌ナナメだな・・・」という、マスターの言葉を無視し、５曲選び、決定ボタンを押した。
ジュークボックスはドーナッツ盤を選択し、回転させ、『名前のない馬（アメリカ）』を流し始めた。
ジュークボックスに両手を乗せ、目を閉じ、しばらく聴いていた。
やがて、ベースが入り、サビに移行したあたりで、俺はカウンターに腰かけた。
「さて・・・何にする？」とマスターは問いかける。
俺は、ため息を深くつき、「・・・ジン・・・」と答える。
カウンターの隅では、いつものように、ヒッピー崩れの女が「ハッパ」をやってる。
その女は、いつもいる。
いつも、いろんな種類の「草」を吸っている。
そして、『名前のない馬』に合わせて、ラリッたまま体をゆすっている。
こっちに向かって、「あんたも吸う？・・・・それとも・・・・オマンコ・・・・フフフフ・・・」と、話しかけてくる。
俺は、首を横に振り、その後は、一切無視しようとした。
曲は『ユーアーソーベイン（カーリーサイモン）』に変わった。
「どうしたんだい？・・・」マスターは、ストレートジンを俺の目の前に置き、心配そうに尋ねる。
「・・・ふられた・・・・」俺は、そう言うと、ジンを一口含む。
「女に？・・・ふられた？・・・」
「当たり前だよ。俺は、男には興味がない・・・・」
「だからか・・・」
「何が・・・」
「いやね、だから、『名前のない馬』と『ユーアーソーベイン』が聴きたくなった・・・・ってことか」
「そうさ、ちなみに次は『イフ』が流れる・・・・」
「やれやれ・・・・」
マスターはそう言うと、少し苦笑いをして、ハッパ女にビールを注ぎに行った。
曲は『イフ（ブレッド）』に変わった。
俺は、マッチでハイライトに火を点け、フラれた女の予定が記された、『１９７１年のポケットカレンダー』にも火を点けた。
その炎は『モンキーズ』の写真が印刷された、灰皿の上で燃え尽きた。
モンキーズは、笑っていたけど、俺は笑う気にはなれなかった。
『ビックジョンジーンズ』に両手を突っ込み、くわえタバコのまま、店の天井を見上げた。
『ドックオブザベイ（オーティスレディング）』が、流れ出す・・・・。
「どうして、ふられた？」と、マスターは言った。
「彼女は、お堅いお役人と結婚した・・・・」と、俺は答えた。
「なるほど・・・」
「遊びは終わりだってさ・・・・」
「まあ、よくある話だな・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、お前さんより、お堅いお役人さんの方が、彼女も幸せになれるだろうよ」
「・・・・なぜ？」
「・・・・・・安定・・・・だな・・・・・・」
「俺は不安定かい？」
「そりゃ、ひいきめに見ても・・・・・ずいぶんと不安定だ・・・・」
最後のリクエストナンバー「スタンドバイミー（ベンＥキング）』が、聴こえてくる。
「お前さんが、選んだ曲を聴いてれば、だいたい心情は察するよ」と、マスターは言った。
「ねえ、兄ちゃん、もっと派手なのにしてよ・・・フッ・・・・」と、ハッパ女も割り込んできた。
俺は、好きだった彼女が、お堅いお役人に抱かれることを想像した。
つい、この前まで、俺が触った、髪や唇や乳房やクリトリスも、今夜はお堅いお役人が愛撫している。
そして彼女は、感じ、濡れ、エクスタシーに達してゆく・・・・のだろうか？
いや、別の見方もある。
つまり、俺との行為が演技だったということ。
俺との行為は、彼女にとって、結婚までの『腰かけ』『アバンチュール』に過ぎなかったということ・・・・。
いや・・・・そんなはずはない。
この手が、確かに彼女の満足を感じ取った・・・・・・・そんな気がする・・・・けど・・・・。
「よお、ジュークボックス、終わっちまったぜ。何かリクエストしなよ」と、マスターは言った。
「・・・・うん・・・・・・・・・」
「まあ、いろいろ経験して、大人になっていくんだよ。俺だって、ずいぶんとフラれてきたもんだ」
「どうすれば、忘れられる？」
「そうだな・・・・・・ジン、ウオッカ、ウイスキー・・・・あとは音楽と・・・・・時間・・・かな？」
「他の女としちゃえば、すぐ忘れられるのにね・・」と、ハッパ女も口をはさんだ。
俺は、しばらく考え、「・・・・・・・そうかも、しれない・・・・」と言い、ハッパ女にビールを注いだ。
「兄ちゃん・・・サンキュ～！」と言って、頬にキスされた。
ハッパ女から、独特の煙臭がした。
マスターは、自分のコインをジュークボックスに入れ、「まあ、元気だしなよ」と言った。
『長い夜（シカゴ）』が、流れ出す。
「イエ~！」と言って、ハッパ女は踊りだす。
その姿を見て、少しだけ笑っちまった。
『ロングトレインランニング（ドゥービーブラザース）』に変わる。
ハッパ女は、シャツを脱ぎ、ジーンズを下ろし、ブラックなブラジャーとショーツで踊っている。
マスターは、ウイスキー片手に笑っている。
俺は、ジンを飲みながら、ドゥービーブラザースのボーカルにコーラスをつけていた。
こうして、1971年の、とある夜は過ぎていった・・・・・。
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2009.04.18 (sat)
“BLOW-UP vol.1”
OPEN 19:30 START 20:00
adv 1,000yen door 1,300yen
《LIVE ACT》
☆SUPER NOVA
☆The Zambo
☆Finn MacCool
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2009.04.25 (sat)
“NEVER the LESS vol.3”
OPEN 19:30 START 20:00
adv 1,000yen door 1,300yen
詳細未定
ほぼ 決まりつつあります♪
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http://stylish.hida-ch.com/
ＢＹナリハラ
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Posted by ＰＳＰスタッフ at 17:47│Comments(4)
この記事へのコメント
Radio Hit's のオンパレードだな、懐かし。ちなみに『ユーアーソーベイン（カーリーサイモン）』は今でも時々一人でがなってます。アレンジがちょっとモータウンっぽいんだよね。
Posted by ネコ先生 at 2009年04月17日 18:56
ネコ先生さま
そうなんです。Radio Hit's ＣＤ見ながら、「どの曲にしようかな？」と、考えながら書きましたよ。個人的には「名前のない馬」が、ドラックやヒッピー文化とかぶりますね。
そうなんです。Radio Hit's ＣＤ見ながら、「どの曲にしようかな？」と、考えながら書きましたよ。個人的には「名前のない馬」が、ドラックやヒッピー文化とかぶりますね。
Posted by narihara at 2009年04月18日 09:55
カーリーサイモン
いいですね～。
いいですね～。
Posted by mina at 2009年04月20日 17:14
minaさま
はじめまして・・・カーリーサイモン、についてあまり詳しくは知らないんですよ。ユーアーソーベインはいい曲ですね。いい曲あったら教えてください。
はじめまして・・・カーリーサイモン、についてあまり詳しくは知らないんですよ。ユーアーソーベインはいい曲ですね。いい曲あったら教えてください。
Posted by narihara at 2009年04月22日 11:49