2008年06月10日
fiction
11歳の俺は、当たり前のように、遊びほうけていた。
それは当たり前といえば当たり前だけど、現在の管理された少年少女たちから比べると、はるかに自由であり、はるかに危険であり、事故や怪我があっても自己責任であり、別の誰かに対して「損害賠償」を求めるなんてこと自体考えもつかない、テメーの尻はテメーで拭く的な時代、1973年は少年少女たちにとって、危険ではあるが見返りとして自由を提供した。
学校帰り、西の山を見た俺は、頂上に立つ円柱の建築物に気が付く。
壁の色は赤で統一され、表現するならば、「山の上に立つ赤い灯台」といったところだ。
しかも不思議なことに、その赤い灯台は、昨日まで気づきもしなかったのに、突然今日になり存在したようなイメージだった。
俺は、一緒に帰った友達に問いかける。
「ねえ、あの赤い灯台みたいなの、なんだろう?・・・」
「えっ、あれ?何かな?、それよりさあ、国語の漢字テストできた?点数悪いと居残りだよ。それに、もう一回テストだってさ、またテストなんていやだよね・・」
「うん、まあ・・・」
友達は、赤い灯台より、今日の漢字テストのことで頭が一杯のようだ。
家に帰り、母親に聞いてみる。
「ねえ、あっちの山に赤い灯台みたいな、あれ、なにかな?」
母は言った。
「灯台?・・お前そんなことより、買い物行って来てくれるかい?いいかい、まちがえるんじゃないよ、20円のコロッケ4つと、醤油と大根半分と・・・」
母は、赤い灯台より、夕飯の準備のことで頭が一杯のようだ。
最初は何も感じなかったけれど、だんだんと11歳の俺は不安を募らせていった。
その「山の頂上に立つ赤い灯台」について、誰もが話をそらした。
友達の誰もが、その話題になると、意識的に、いや無意識かも知れないが、話をそらした。
決定付けたのが、美術の時間。
自分の好きな風景を、絵具で書くという、当たり前の時間。
俺は迷わず、西の山の頂上に立つ赤い灯台を描いていた。
先生は、俺の絵を見ていった。
「うん、もっと、色を使おうか、山はみどりだけど、青や黒も使って・・」
俺はチャンスと思い聞いてみた。
「先生、あの赤い建物は、やっぱり赤でいいですよね」
先生は、瞬間的に止まり、次の瞬間こう言った。
「赤い・・?それよりも、もっと町並みも書こう。そうじゃないと、山ばかりで・・・」
俺は言った。
「先生、赤い建物は、どうしましょうか?」
先生は声を荒げた。
「こら!聞いてるのか!しっかりやらないとダメだぞ!」
周りは静まり返り、視線は俺と先生を見つめる。
俺は「ごめんなさい・・」とあやまり、先生は「がんばりなさい・・」といって、俺の肩を軽くたたいた。
11歳の俺は、子供だったけど、この時確信した。「あの赤い灯台の話に、みんな触れたがらない・・」と。
その日の帰り道、田中君が声をかけてきた。
「実は、僕もそうなんだ。山の上の赤い建物だろ?みんな、話を避けるんだ。しつこく聞くと怒り出すんだ」
俺は聞いた。
「どうしてかな?」
田中君は言った。
「わかんないよ」
俺たちは、日曜日に、山の頂上に立つ赤い灯台に行ってみることにした。
その山のふもとには、道みたいなものはあったし、山の高さからいって、2時間もあれば頂上につけると思った。
やがて日曜日午後1時、山のふもとで待ち合わせた俺たちは、水筒の水とリュックの中にあるお菓子を確認し、頂上に続くであろう草と砂利に覆われた道に足を踏み入れた。
俺たちは遠足気分で、いろんなことを話しながら、そして笑いながら歩いた。
俺は中学になったら野球部に入ることや、ジャイアンツは今年優勝できないかもしれないって話。
田中君は、お父さんの仕事の都合で、もうすぐ引っ越すかもしれないって話。
田中君の好きな女の子の話。
「きょう子って、かわいいよね」って、田中君は言うものだから、2人で「きょーこー!」って叫んだ。
俺たちは、しばし休み、そして歩き、また休み・・。
そして、頂上へ。
しかし、赤い灯台は隣の山の頂上に立っている・・・。
「なぜ?」
俺たちは顔を見合わせ、愕然としながらも、もう一度、赤い灯台を目指す。
道を探し、磁石を確認し、水筒の水を飲み、再び頂上へ。
しかし、やはり赤い灯台は隣の山の頂上に・・・。
「なぜ?」
俺たちは途方に暮れる。
田中君は肩で息をしながら言った。
「ねえ、あそこには、行けないんじゃないかな・・」
俺は言った。
「どうして?」
田中君は答える。
「わからないけど、僕たちには、無理なこともあるんじゃないかな?」
俺たちは、座り込み、水を飲み、最後のチロルチョコレートをほうばる・・・。
田中君とは、その後、あまり話さなくなり、1ヵ月後、話していた通り、お父さんの転勤で大阪に転校した。
赤い灯台は、田中君が転校してまもなく・・・消えた。
いや、取り壊されたというべきなのだろうけど、当時の俺の感覚からすると、突然風景から抹消されたような印象を持つ。
これで、この話は終わるはずだったけど、再びあの「山の上に立つ赤い灯台」がよみがえる出来事があった。
40歳のとき、小学校の同窓会が行われ、俺は田中君と30年ぶりで再会した。
「やあ、久しぶり、元気?」などと、あたりさわりのない話をして、お酒を飲んだ。
俺は田中君に聞いた。
「ねえ、あの赤い建物覚えてる?ほら、2人で西の山登ったよね、覚えてるかな?」
田中君は少し考えてから答えた。
「・・えっ、ゴメン、覚えてない。山の上の?赤い?・・・」
俺は続けた。
「ほら、君の好きだったきょう子の話もして、2人できょーこー!って叫んだだろ」
田中君は、深く考え込み、いや酔っ払ったようで、フラフラした。
「おい、大丈夫か、おいおい・・」と、俺が肩に手をかけるとこう言った。
「・・・ごめんごめん、酔っ払ったみたいだな・・・でも・・・・ひとつだけ・・・・あのことは・・・忘れたほうがいい・・・」
と言って酔いつぶれた。
「・・・あのことは・・・忘れたほうがいい・・・・」
と、いまだに、彼の言葉が俺の中で、リフレインしている。
世の中には、触れてはいけないもの、語っちゃいけないこと、行ってはいけない場所が、あるということなのだろうか?
しかし、思い出の中に、しっかりとした記憶が、赤い灯台を目指し、山を上がる、俺と田中君を感じられる。
あの時の、温度、草の匂い、汗、チロルチョコレート、きょう子・・・。
1973年の記憶は、消すわけにはいかない。
NEXTLIVE
“JUNK PERFORMANCE vol.6”
OPEN 19:30~ START 20:00~
adv 1000yen door 1400yen
《BAND》
○SUPER NOVA
○SPREAD GERM
○The Zambo
BYナリハラ
Posted by PSPスタッフ at 09:18│Comments(10)│TrackBack(0)
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この記事へのコメント
あ〜、しゃべっちゃったよー。
しらないよー、どうなっても。
しらないよー、どうなっても。
Posted by ネコ先生 at 2008年06月10日 11:09
面白いですね。
連載希望!
連載希望!
Posted by C at 2008年06月10日 12:13
アワワワワ……((((;゚Д゚))))…………
ふ、触れてはいけなかったのに………
(;-人-)………ナマンダー ナマンダー ナマンダー……………
ふ、触れてはいけなかったのに………
(;-人-)………ナマンダー ナマンダー ナマンダー……………
Posted by ひっさ at 2008年06月10日 14:52
ネコ先生様
大丈夫ですよ。フィクションですから・・たぶん。
Cat様
始めまして、ご評価ありがとうございます。また、ネタあったら、書きますね・。
ひっさ様
ナマンダー・・・、フィクションですよ。ライブがんばってね。
大丈夫ですよ。フィクションですから・・たぶん。
Cat様
始めまして、ご評価ありがとうございます。また、ネタあったら、書きますね・。
ひっさ様
ナマンダー・・・、フィクションですよ。ライブがんばってね。
Posted by narihara at 2008年06月10日 17:17
すっげ〜!
そんなことあったんっすか〜!?
いい話です
赤い灯台、見てみたいなぁ
1973はまだ生まれてないんで、きっとボクは知らないんですけど、その話、信じます!
手伝わせてください!情報収集して、報告しまぁ〜す
そんなことあったんっすか〜!?
いい話です
赤い灯台、見てみたいなぁ
1973はまだ生まれてないんで、きっとボクは知らないんですけど、その話、信じます!
手伝わせてください!情報収集して、報告しまぁ〜す
Posted by じょ at 2008年06月10日 22:55
南小のじょちゃん様
信じることは良いことです。嘘でもほんとに見えてくるしね。1973年、君はまだお父さんの中でくすぶっていたはずだ・・。
信じることは良いことです。嘘でもほんとに見えてくるしね。1973年、君はまだお父さんの中でくすぶっていたはずだ・・。
Posted by narihara at 2008年06月11日 09:20
きょう子・・・
これだけはノンフィクション???
これだけはノンフィクション???
Posted by サトコ at 2008年06月11日 12:42
サトコ様
つっこむね~。すっきやな~。モチーフにした子はいますよ。けど、君の方が「ええ女」やぞ。なあ、あなたのブログカキコってパスいるの?そこらが、わからん・・・。
つっこむね~。すっきやな~。モチーフにした子はいますよ。けど、君の方が「ええ女」やぞ。なあ、あなたのブログカキコってパスいるの?そこらが、わからん・・・。
Posted by narihara at 2008年06月11日 17:16
YAHOO!!BLOGへの書き込み???
パスワードとか特にないよっ!
是非、ご訪問くだされ。
あっ、エロ書き込みは削除するでなぁ~(^皿^)♪
パスワードとか特にないよっ!
是非、ご訪問くだされ。
あっ、エロ書き込みは削除するでなぁ~(^皿^)♪
Posted by サトコ at 2008年06月11日 22:50
さとこさま
了解しました。パスワードは、ヤフーのパスやなたぶん。エロ書きしません!
了解しました。パスワードは、ヤフーのパスやなたぶん。エロ書きしません!
Posted by narihara at 2008年06月12日 09:55



